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2023/03

第24回 都医学研国際シンポジウム

Early Detection and Social Intervention for Psychosis and Suicide

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3月17日(金曜日)、当研究所は、「Early Detection and Social Intervention for Psychosis and Suicide(若者の精神病と自殺を防止するための社会的介入)」と題して、第24回都医学研国際シンポジウムを開催しました。国際シンポジウムは、国内、国外の研究者を招聘し、医学に関連する最先端の研究成果について活発に討議することを目的としています。今回は、英国と米国から3人の研究者をお招きし、幻覚や妄想などの精神病体験と自殺を防ぐための社会的取り組みに関する最新の研究成果をご発表いただきました。

多くの先行研究によると、若者における幻覚や妄想などの精神病体験はその後の自殺と関連することが明らかにされています。従って、自殺を予防するためには精神病体験を早期に同定し、適切なケアを提供することが重要です。エディンバラ大学のIan Kelleher先生は、英国では精神病体験のある若者が、安心してメンタルヘルスの不調を相談できる窓口が身近に整備されており、精神病体験の早期同定に非常に役立っていることを紹介されました。また、フォーダム大学のJordan DeVylder先生は、自殺を防止するサポートチームのメンバーを精神病体験のある若者自身が指名して選ぶ、という米国の新たな自殺予防ケアを紹介されました。

精神病体験が続くと統合失調症などの精神病を発症する可能性が高まることが知られています。これまで、精神病の発症はどの国でも、どの地域でも約1%と説明され、悲観的な経過について強調されてきました。Jordan先生は、人種差別や警察の暴力を受けた経験がある若者の集団では精神病体験の頻度が高いことを発表されました。また、キングス・カレッジ・ロンドンのCraig Morgan先生は、人種差別、貧困、暴力、いじめや虐待などの幼少期の逆境体験といった社会的な要因が精神病の発生に大きく影響していることを発表されました。また、トリニダードトバゴ、インド、ナイジェリアなどの発展途上地域における大規模疫学調査によって、精神病の発生頻度や好発年齢が国によって異なり、予後は決して悲観的ではなく回復することが一般的であることも発表されました。

当研究所心の健康ユニットの山﨑修道副参事研究員は、我が国最大の大規模思春期コホートであるTokyo Teen Cohort projectを紹介し、6年間、83%以上の高い継続率を維持していることを発表しました。また、先行する幻聴体験がその後の自傷行為を予測することを報告しました。同じく心の健康ユニットの宮下光弘副参事研究員は、過剰な糖から生じる終末糖化産物が、精神病を発症する前から、いじめによって蓄積することを発表しました。終末糖化産物は、身体の病気に関連する分子であり、統合失調症の身体合併症の一因となる可能性を報告しました。

ゲノム、バイオマーカー、脳画像といった生物学的要因と精神病体験との関連を研究することは、より良い診断方法や治療薬を開発するうえで重要です。一方で、今回のシンポジウムでは、精神病体験の発生を防ぎ、その先にある自殺を予防するためには、差別、貧困、暴力、幼少期の逆境体験などの社会的な課題に取り組むことも必要不可欠であることを学びました。

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