宮澤 エマ Ema Miyazawa

女優

舞台のもつ熱量が、心を揺さぶる

私はアメリカ人の父と日本人の母の間に生まれ、幼い頃から日本とアメリカを行き来していました。移り住むたびに言葉を忘れていたので、親の意向もあり日本のインターナショナルスクールに通うことになった時は、英語を話すことができず強い不安を覚えました。その頃がちょうど一つ目の思春期で、いろんなことが変わりだす時期でした。みんなが将来のことを考え自分で意思決定をし始める頃に、『親の方針で自分の未来が決まっていく』というのが許せなかったのです。抱えている問題は自分で解決できるようなことではないと理解していましたが、それでも相談相手や共感してくれる人が欲しかった。自分の内に閉じこもるタイプだったので、あまり理解してもらえていないという思いを漠然と抱えながら過ごしていました。

そして、新しい学校で演劇部やバンド活動に取り組み、自分の気持ちを表現する場をみつけたことが私にとっての転機となりました。自分の言葉で表現できない場合は、歌や演劇を通じ、他の人の言葉を借りて表現することも出来ました。当時、思春期ならではの葛藤として『自由じゃないこと』に対するもどかしさを抱えていましたが、歌は、表現の中に自由がありました。歌っている時は、自分にしかできないことがあるということを実感できました。思春期の、心の中の『ざわついているもの』は特別なものだと思います。その時が過ぎてしまうと無くなってしまうものだけれど、ものすごいエネルギー量もある。ブログに書くとか絵を描くとか、どのような形であってもいい。「のびのびと自分の意見を言ったり、間違えを恐れずに何かをすることが、もっとあっていい」と感じます。

そういったやりたいことが何なのかわからないことは、よくあることだと思います。悩んでいる人は、お芝居を観てもらうだけでも何かを与えることができるかもしれません。今の時代、エンターテイメントがあふれている一方で、お芝居やミュージカルのように2時間を人と一緒に共有する経験は少ないと思います。お金を払って、そこに足を運んで、時間を共有する経験は、とても贅沢でもあり、自分を変える時間でもあります。毎日がつらくて、突破口がどこにあるのか分からない人は、ぜひ劇場まで舞台を観に来てほしい。その時は何もひっかからなくても、ふとした瞬間に思い出すことがあると思いますし、少しでも何かを感じてくれたら嬉しいです。

(2018年12月)

Profile

1988年生まれ。ラジオのパーソナリティを機に、テレビのバラエティや報道番組、ドラマなどで活躍。舞台『メリリー・ウィー・ロール・アロング~それでも僕らは前へ進む~』で舞台デビュー。その後、『シスター・アクト~天使にラブ・ソングを~』、『Endless SHOCK』、『ラ・マンチャの男』、『ドッグファイト』、『紳士のための愛と殺人の手引き』、『ジキル&ハイド』などミュージカルへの出演を重ねている。2018年12月には三谷幸喜新作ミュージカル「日本の歴史」に出演。