押切 もえ Moe Oshikiri

モデル

思春期の頃の私は、とても恥ずかしがり屋で人見知り、自分に自信がなくて傷つきやすい子だったと記憶しています。家族や親しい友達と一緒の時は冗談を言い合うのを楽しみ、自分の意見をはっきり伝えることもできましたが、関係が浅い人の前ではそれが怖くて、一気に口数が少なくなってしまう。「もしも誤解されて嫌われてしまったらどうしよう」と、実際に起きてもいないことを考えて胸を痛めることもありました。昔から想像力が豊かだったのですが、悪い方へ向かってしまうことがあったんですね。

また、素直になれないことも多かったです。学校でモヤモヤしたことがあった時、家に帰ってもそれを引きずってしまって「何かあったの?」と聞いてくれる母にうまく伝えられず、ついきつく否定してしまったことが。大好きな母にそんな態度を取った自分がいやで仕方なくて、さらに落ち込みましたね。

大人になった今では、「まあまあ、一度落ち着いて。それから視野を広げて考えてみたら?」とその時の私にアドバイスをしたいぐらいですが、幼かった私はどうしたら視野を広げられるのかさえわかりませんでした。

ただ大人になって振り返ると、そんなひとつひとつの失敗や葛藤、反省の繰り返しによってだんだんと自分の心が強くなったことはたしかです。素直になれない時があったら、その現実を受け入れて、「今度からは意識して自分から心を開くようにしてみよう」と行動するように。また、「誤解されるのがいやだったら、どうすれば理解してもらえるのか」と考えて、自分に向いていた意識の矢印を相手の方へ向けるようにしました。はじめから満足がいくほどはできなくても、「次は」「次なら」と、状況に合わせて考えるようになりました。そのおかげもあって、余計な恐怖心や不安も少しずつ薄らいでいったように思います。恥ずかしがり屋な面は今もまだ少しありますが(笑)、モデルや執筆業、人前でお話をするお仕事の時、自分に自信を持つべきところではきちんと持てるようになりました。

壁に突き当たった時、読書に没頭したり、絵を描いたりしたことで解決につながったことも多々あります。自分の悩みに直接答えを出してくれるような本、または自分の生活する世界なんてどれだけちっぽけなものかと思わせるようなファンタジー作品、なんにも考えずにただひたすら笑える娯楽作品などに、これまで数え切れないほど救われてきました。今もし悩みを抱えていて、じっくりそれと向き合いたいという方は、自分に合う本を探してみてもいいかもしれません。絵を描くことも想像力を使って作業に集中できて達成感を得られるので、一つの事柄ばかり考えてしまうような時にはおすすめです。どちらも私が小さい頃から好きなことですが、趣味や好きなことに愛情を注ぐ時間は、人生を豊かにしてくれるように思います。それが仕事につながることもあるし、同じ思いを共有できる友人との出会いは大きな喜びをもたらしてくれますね。

思春期は初めての経験がどんどん増えていって、急に大人と同じような考え方やふるまいを求められる時期でもあると思います。けれど経験がない分、悩んだり、失敗したりすることもある。自分の中でいろんな視点を持ってじっくり考えることは必要だけれど、どうしても解決できないことがあったら、周りの人を頼ってほしいです。きっと話してもうまくわかってもらえない、なんて思わないで。そう思い込んで、たくさんの遠回りをしてしまった私だから、それを伝えたいです。

これからもものすごい速さで世界が変化し続ける中、柔軟で多角的な考え方に加えて、人を思う気持ちはより大切になってくると思います。私の周りを見回してみると、素直で、思いやりと優しさ、感謝できる気持ちを大切にする人は、どんな分野の方であってもとても輝いています。あなたの心にもある、そんな素敵なところを、いつまでも大事に育てていってくださいね。

(2019年5月)

Profile

1979年千葉県生まれ。小学館「CanCam」では2001年8月号~2007年4月号まで、「AneCan」では2007年4月号~2016年12月号まで専属モデルを務める。趣味は料理、読書。特技は絵画。モデル業の他、育児雑誌への連載やプロヂュース業など多彩に活躍。著書「永遠とは違う一日」を2018年に新潮社から出版。