緩和ケアはQOLの最大化を目的とし、高齢者の保健医療に統合されるべき重要な理念です。しかし、保健医療施策における緩和ケアの位置づけは、これまで明らかではありませんでした。
当研究所・社会健康医学研究センターの中西三春主席研究員は、ブリュッセル自由大学の国際共同研究に参加し、日本を含む13か国の高齢者の保健医療施策を収集して内容分析を行いました。ケアの継続性(n=12)、コミュニケーションとケアの計画(n=11)、家族支援(n=11)、倫理と法的側面(n=11)については多くの国の施策で対応されていました。一方、現存する緩和ケア戦略とのつながりを明らかにしているのは、5か国にとどまりました。今後の高齢者の保健医療施策において、終末期ケアと緩和ケアとの連携を強化することの重要性が示唆されています。
本研究成果は、2020年12月9日(水曜日)に、欧州緩和ケア学会が発行する学術雑誌「Palliative Medicine」オンライン版に掲載されました。
<論文タイトル>Inclusion of palliative care in health care policy for older people: A directed documentary analysis in 13 of the most rapidly ageing countries worldwide
<掲載学術誌>Palliative Medicine
<DOI>10.1177/0269216320972036
論文
高齢期
令和元年度厚生労働省老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業)の調査で、認知症ケアプログラムの実施に係る所要時間を評価しました。
<論文タイトル>Time investment for program implementation to manage neuropsychiatric symptoms: an observational longitudinal study in in-home and residential care settings.
<掲載学術誌>J Alzheimers Dis Reports
<DOI>10.3233/ADR-200235
論文
高齢期
認知症
世界人口の高齢化にともない、高齢期の幸福感を支える要因の解明に国際的関心が集まっています。特に、出生から高齢期までの人生を連続的に俯瞰し、若い頃のライフステージ(思春期・青年期など)のどのような要因が高齢期の幸福感を高めるのか、そうした問いを人生縦断的な実証研究(ライフコース疫学研究)によって明らかにすることが期待されています。
当研究所・社会健康医学研究センターの山﨑修道主席研究員、西田淳志センター長らは、ロンドン大学と共同研究を行い、第二次世界大戦直後に英国全土で開始され60年以上にもわたって継続されてきた大規模追跡調査のデータを分析し、思春期の時点で抱いていた価値意識、具体的には「興味や好奇心を大切にしたい」という価値意識が、高齢期の高い幸福感を予測することを世界ではじめて明らかにしました。
この結果は、高齢期の幸福感を高めるためには、思春期・青年期の若者たちの興味や好奇心などの内発的動機をはぐくむ環境づくりが大切であることを示唆しています。
本研究成果は、2020年9月16日(水曜日)に、英国科学誌「The Journal of Positive Psychology」オンライン版に掲載されました。
<論文タイトル>Interaction of adolescent aspirations and self-control on wellbeing in old age: Evidence from a six-decade longitudinal UK birth cohort.
<掲載学術誌>The Journal of Positive Psychology
<DOI>10.1080/17439760.2020.1818809
<URL>https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/17439760.2020.1818809
<プレスリリース>http://www.igakuken.or.jp/topics/2020/0916.html
論文
思春期
東京ティーンコホート
<論文タイトル>Long and short sleep duration and psychotic symptoms in adolescents: Findings from a cross-sectional survey of 15 786 Japanese students.
<掲載学術誌>Psychiatry Res
<DOI>10.1016/j.psychres.2020.113440
論文
思春期
<論文タイトル>Bi-directional relationships between psychological symptoms and environmental factors in early adolescence.
<掲載学術誌>Frontiers in Psychiatry
<DOI>10.3389/fpsyt.2020.574182
論文
思春期
東京ティーンコホート
<論文タイトル>The Prevalence of Psychotic Experiences in Autism Spectrum Disorder and Autistic Traits: A Systematic Review and Meta-Analysis.
<掲載学術誌>Schizophr Bull Open
<DOI>10.1093/schizbullopen/sgaa046
論文
思春期
母乳栄養はその後の子どもの感情および運動の発達に影響を与えることが知られています。新生児期および乳児期の母乳栄養が早期思春期における脳神経発達にどのように影響するかを知ることは子どもの健康な発達を支援する上で重要ですが、これまでに十分に明らかにされていませんでした。
本研究では、東京ティーンコホート参加者のうち10〜13歳の207名を対象にMRI画像検査を行い、母子手帳をもとに調べた母乳栄養期間と、脳構造との関係を調べました。その結果、母乳栄養期間と背側および腹側線条体と眼窩前頭前野の体積とが正の相関を示しました。また、母乳栄養期間が子どもの感情的行動と関連することがわかり、さらに眼窩前頭前野の体積が母乳栄養期間と感情的行動との関係を媒介していることがわかりました。これらの結果は、母乳栄養が感情的発達に関連する脳神経発達に重要な役割を果たしていることを示しています。
<論文タイトル>Association between duration of breastfeeding based on maternal reports and dorsal and ventral striatum and medial orbital gyrus volumes in early adolescence.
<掲載学術誌>Neuroimage
<DOI>10.1016/j.neuroimage.2020.117083
論文
思春期
東京ティーンコホート
思春期の児童には、様々な心理行動問題があらわれます。この研究は、こうした問題の背景に、親子関係を反映する児童の脳の特徴が関与している可能性を検証しました.親子関係の質と児童の心理問題行動には複雑な関係が示唆されています。例えば、同じ親子関係でも、父子・母子関係では児童の問題に異なる影響を及ぼし得ます。この研究では、親子関係の各側面と相関する児童の脳領域間の機能的結合の集合体(connectome)から、「コネクトーム予測モデル」という手法を使って、思春期早期の心理行動問題の予測を試みました。その結果、引きこもりなど、特に女児の内在化問題に関して、モデルの予測値と実際のデータで強い一致を観察しました。この結果から、児の脳機能ネットワークが、親子関係に関する重要な情報を表現している新しい可能性が示唆されました。
<論文タイトル>Functional connectomes linking child-parent relationships with psychological problems in adolescence.
<掲載学術誌> Neuroimage
<DOI>https://doi.org/10.1016/j.neuroimage.2020.117013.
論文
思春期
東京ティーンコホート
向社会性という主体価値と関連する態度の脳基盤と、親から子への伝達可能性を解明した研究です。
向社会性は自発的な利他的態度を指し、社会的動物であるヒトにとって重要な主体価値です。ヒトのパーソナリティが親子間で伝達することは報告されていましたが、その脳基盤はわかっていませんでした。前部帯状回という社会性に関連する部位における、抑制-興奮バランスの親子間類似性により、向社会性の親子伝達が説明される可能性が示されました。またこうした機序と独立して、子に対する親の愛情表現が大きいと子の向社会性が高いことも分かりました。この研究はIntergenerational population neuroscienceとしての初めての報告であり、主体価値の発達に対する親からの影響に関して、その理解を深めることに貢献するものと考えられます。
<論文タイトル>Neurometabolic underpinning of the intergenerational transmission of prosociality.
<掲載学術誌>Neuroimage
<DOI>10.1016/j.neuroimage.2020.116965
論文
思春期
東京ティーンコホート
<論文タイトル>Facilitators and barriers associated with the implementation of a Swedish psychosocial dementia care programme in Japan: A secondary analysis of qualitative and quantitative data.
<掲載学術誌>Scandinavian Journal of Caring Sciencces
<DOI>10.1111/scs.12854
論文
高齢期
認知症
<論文タイトル>National dementia plans to address escalating global palliative care needs.
<掲載学術誌>Palliative Medicine
<DOI>10.1177/0269216320913466
論文
高齢期
思春期発来が早い女児で認められやすい心理的な困難さの一因を、脳科学的に解明した研究です。
女児における思春期の早発とメンタルヘルスの関連はこれまで、ボディイメージの悩み、不適切な仲間関係、虐待の影響といった、小児科学や進化心理学などの文脈で考察されていましたが、その脳基盤はわかっていませんでした。この研究では、前部帯状回膝下部という気分障害に関連する部位の回路障害と関連する可能性が示唆されました。ヒトが個人のウェルビーイングをどのように発展させるかという主体価値の不全に関して、その理解の一助となる可能性が期待されます。
<論文タイトル>Smaller anterior subgenual cingulate volume mediates the effect of girls' early sexual maturation on negative psychobehavioral outcome.
<掲載学術誌>Neuroimage
<DOI>10.1016/j.neuroimage.2019.116478.
論文
思春期
東京ティーンコホート
<論文タイトル> Development of the Brief Personal Values Inventory for Sense of Values.
<掲載学術誌>Japanese Psychological Research
<DOI>10.1111/jpr.12277
論文
思春期
<論文タイトル>Assessing the hierarchy of personal values among adolescents: A comparison of rating scale and paired comparison methods
<掲載学術誌>Journal of Adolescence
<DOI>10.1016/j.adolescence.2020.02.003
論文
思春期
東京ティーンコホート研究
社会的ひきこもり(social withdrawal)という主体価値の不全に関連する態度の生物学的基盤の一端を解明した研究です。思春期の社会的引きこもりについては、その後さまざまな精神疾患のリスクとも関連することが知られ、早期支援の必要性が指摘されていますが、生物学的基盤について統合的な理解に至っていませんでした。この研究では、思春期前期男女の唾液サンプルを用い、社会的引きこもりとテストステロン値の関連を解析した結果、男児の唾液中テストステロン値は社会的引きこもり傾向と負の相関を示した一方で、女児では相関がみられませんでした。思春期に生じる主体価値の不全に関して、今後も内分泌の観点から生物学的基盤の理解が進むことが期待されます。
<論文タイトル>Social withdrawal and testosterone levels in early adolescent boys.
<掲載学術誌>Psychoneuroendocrinology
<DOI>10.1016/j.psyneuen.2020.104596
論文
思春期
東京ティーンコホート研究
<論文タイトル>Dog and cat ownership predicts adolescents’ mental well-being: A population-based longitudinal study.
<掲載学術誌>International Journal of Environment Research and Public Health, 17: 884
<DOI>10.3390/ijerph17030884
論文
思春期
東京ティーンコホート研究
<論文タイトル>Availability of home palliative care services and dying at home in conditions needing palliative care: A population-based death certificate study.
<掲載学術誌>Palliative Medicine (2020), 34(4), pp.504-512
<DOI>10.1177/0269216319896517
論文
高齢期